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大阪府立中央図書館で童画家「茂田井武原画展」 未刊行作品の原画も

新美南吉幼年童話集「きつねのおつかい」の原画

新美南吉幼年童話集「きつねのおつかい」の原画

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 大阪府立中央図書館(東大阪市荒本北1、TEL 06-6745-0170)で8月22日、「茂田井武原画展-『きつねのおつかい』にみる物語絵の魅力」が始まった。

戦時中に出版された初期の児童向け絵本

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 1908(明治41)年、東京生まれの茂田井武(もたいたけし)は、赤坂中学校を卒業後、川端画学校、本郷絵画研究所で学び、1930(昭和5)年、パリへ渡り働きながら絵を描く。宮沢賢治の「セロひきのゴーシュ」(福音館書店)の挿絵で知られる茂田井だが、帰国後は「自分の中の暗いものを子どもに見せたくない」と児童向けの本の仕事を拒み、1936(昭和11)年、探偵小説雑誌「新青年」に挿絵を発表。1942(昭和17)年に結婚をし、この頃から絵本や童画の勉強に本格的に取り組み、1956(昭和31)年に亡くなるまで子ども向け雑誌や子どもの本に挿絵を描き続けた。

 同展では、現在でも愛好者が多い茂田井の作品が当時どのように掲載され、どのように楽しまれたかを国際児童文学館所蔵資料と合わせ展示。

 大阪府立中央図書館1階展示コーナーでは、戦時中や戦後の子どもたちが明るい気持ちになるような、色彩豊かな絵を描いた児童雑誌や、海外生活の経験から海外の国を知れる作品、旅行をテーマにした自作絵本などを展示。新美南吉幼年童話集「きつねのおつかい」の原画や未使用の表紙、口絵などの原画や、目次からすべての挿絵がそろっているが刊行されなかった「がちょうのたんじょうび」などの原画も展示する。同時代に活躍した画家が同じ作品で挿絵を担当したものと並べ、それぞれの画家の個性を見ることができるコーナーもある。

 国際児童文学館では、茂田井と直接の交流はなかったようだがお互いの存在を意識していたのではないかとされる小山内龍の作品や資料を展示。小山内は動物や昆虫の絵を得意とし、茂田井よりも早く児童向けの絵を描き始めているが、同じ雑誌に同時に掲載されたことや海外生活経験があることなど共通する項目も多い。茂田井との関わりを対比する年表で紹介し、復刻本や雑誌などを閲覧できるようにした。

 会場では、一筆箋(324円~)、ポストカード(10種類、1枚108円)、茂田井が自身の子どものために描いた流通していない絵本「アサノドウブツエン」(16ページ、864円)、原画オリジナルパッケージ入りクッキー(1枚100円)などのグッズも販売する。

 8月26日14時~15時30分には、絵本研究家で作家の広松由希子さんを講師に招き、府民講座「茂田井武の物語絵」を開講。定員70人。受講料500円。受講には申し込みが必要。

 大阪府立中央図書館指定管理者・図書館流通センターの仲麻紀子さんは「挿絵は絵が物語らないといけないと言われるが、それに秀でた画家。その『物語る力』を展示と講演会で感じてもらいたい」と話す。

 開館時間は9時~19時(土曜・日曜・祝日および国際児童文学館は17時まで)。月曜、9月14日休館(9月18日は開館)。入場無料。9月18日まで。

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