大阪樟蔭女子大学田辺聖子文学館(東大阪市菱屋西4、TEL 06-6723-8182)で現在、企画展「田辺聖子の樟蔭時代」が開催されている。
2007(平成19)年6月10日に開館し、今年で12周年を迎えた同館。作家の田辺聖子さんは1944(昭和19)年4月から1947(昭和22)年3月までの3年間、同大学の前身の樟蔭女子専門学校に在学し、空襲、終戦、戦後の価値観の転換など激動の3年間を在学時に過ごした。
同展では、田辺さんが当時を振り返って書いた作品やインタビュー記事などを展示。6月8日から始まったが、6月6日に田辺さんが逝去し10日に各メディアが報じたことから、「惜しんでお別れに来られる方もいるので直筆原稿などを増やした」という。同館入り口には記帳台を設置する。
会場では、田辺さんが50歳ごろに書いた自伝作品「しんこ細工の猿や雉」の直筆原稿と文庫本を展示。女学生時代から芥川賞を受賞するまでを綴った作品で、「『欲しがりません勝つまでは』とセットで読むと、幼少期から芥川賞受賞までがつながる」と学芸員の住友元美さん。隣には、樟蔭女子専門学校卒業式当日に撮影された写真と、初展示となる卒業時の写真について書かれた無題の原稿が並ぶ。連載最終回に樟蔭時代について書いている「田辺写真館が見た『昭和』」は、掲載誌と文庫本を展示する。
1986(昭和61)年ごろに樟蔭の中高生に向けて書かれた「若い後輩へ-読書のすすめ」の直筆原稿6枚は、樟蔭学園創立70周年の記念誌への寄稿を依頼した際に別に書かれたもので、以前は樟蔭中学校・高校の図書館に所蔵されていたが2015(平成27)年5月に同館が譲り受けた。幼少期から読書が好きだった田辺さんが分かりやすく読書の魅力を語りかけるような文章で、毎年授業で同館を見学する6月に展示している。
70周年記念誌に寄せた原稿には「樟蔭の学生時代は私の人生にとっても、最も輝やかしい思い出の一部」(原文ママ)と書かれており、1971(昭和46)年に掲載された「樟蔭同窓会報」には、学園の敷地に軍服を作る工場があったが、教育を受ける権利が学生にあり、それを守る先生がいたことを示すエピソードが書かれている。住友さんは「学園を愛していたということが伝わる文章や戦時中の大変な時に大好きな国文学を学べたことがわかる資料があり、戦争が日常だったがクスッと笑えるものもある」と話す。
開館時間は9時~16時30分。日曜・祝日・大学の休業日は休館。入場無料。7月8日まで。