「工場を記録する会」顧問の成瀬俊彦さんが10月5日、Kindle版電子書籍「河内ものづくりルネサンス~東大阪地域経済の歴史と工場ミュージアム構想~」を出版した。
1944(昭和19)年生まれの成瀬さんは、1966(昭和41)年に神戸商科大学を卒業後、布施商工会議所(現・東大阪商工会議所)に入所。トップシェア企業を紹介する冊子「きんぼし東大阪」の編集や、産学連携事業、人工衛星プロジェクトなどを担当し、企画調査部長、常務理事事務局長などを歴任し、2004(平成16)に退所した。
2004年4月から、インキュベーション施設「クリエイション・コア東大阪」産学連携チーフコーディネーター、大阪産業大学アントレプレナー学科客員教授などを兼任、大阪産業振興機構では2014(平成26)年からオープンイノベーション支援事業を担当し、大企業のニーズと中小企業のシーズのマッチングを担当した。
現在は、東大阪市内の工場の歴史を記録し、資料や写真を公開することで工場の誕生や操業の様子を後世に伝える活動をする「工場を記録する会」顧問、中小企業の会長や相談役、顧問で構成する「東大阪中小企業会長倶楽部」事務局長、河内地域の歴史を学ぶ会や小学生向けの町ガイドなど、産業と歴史の両面から地域振興に携わっている。
「商工会議所時代の先輩から『本にして何か残しておいた方がいい』と言われ、ずっと何か書きたいと思っていた」と成瀬さん。54年にわたり、ものづくりに関連する事業に携わってきたことから、河内木綿全盛期、地場産業とものづくり基盤産業、規模は小さいが技術を持ちトップシェアを誇る「中核企業」の発展をたどり、課題や解決の方策についてまとめようと、5年ほど前から執筆を始めた。
同書では、河内木綿全盛期と衰退後の転業、転職後の糸偏産業を中心とする第1期、鉄線と鋳物などの地場産業を形成する第2期、「中核企業」隆盛期の第3期を歴史区分とし、その変遷をたどる。終盤では、立地問題や後継者問題、中小企業の情報発信力の弱さなど、ものづくり企業が抱える課題と課題解決の方策、ものづくりの情報発信拠点となる「東大阪工場ミュージアム構想」の内容について提言している。
「河内木綿が壊滅してブラシの技術が生まれ、次から次へと産業を生み出して再生を繰り返していることから、タイトルに『ルネサンス』と付けた」と成瀬さん。「産業と歴史が融合した本になっているので歴史好きの人にも読んでもらいたい。経営者の方にはコロナ禍で大変な時期だが、こういう過程を知ってもらい、変化はチャンスだと捉えて進んでほしい」と話す。「本をまとめるにあたり調べていると面白い話が聞けた。次は裏話をエッセー風にまとめたい」とも。
189ページ、500円。収益は、ものづくりに関連する公的機関に寄付する予定。