大阪府立中央図書館(東大阪市荒本北1、TEL 06-6745-0170)1階展示コーナーで現在、企画展「田辺聖子が描いた古代ロマンー『隼別王子の叛乱』の世界ー」が開催されている。
大阪樟蔭女子大学田辺聖子文学館(菱屋西4)と共催の同展。田辺さんは1964(昭和39)年、「感傷旅行(センチメンタル・ジャーニイ)で第50回芥川賞を受賞し、恋愛小説やエッセー、評伝などのほか、古典を題材にした作品を多く残している。
「隼別(はやぶさわけ)王子の叛乱」は古事記に着想を得て書かれた古代小説で、田辺さんが樟蔭女子専門学校時代だった1946(昭和21)年からイメージを膨らませていたという作品。1957(昭和32)年に原型となる短編小説「墨刑」を雑誌の懸賞小説に応募し、1961(昭和36)年には、同人誌「のおと」7号に「隼別王子の叛乱」のタイトルで発表。その後、雑誌連載小説となり、1977(昭和52)年に単行本が刊行された。
「隼別王子の叛乱」のタイトル誕生60年を記念し企画した同展では、同作品に関する資料やパネルを展示。着想から20年の歳月が掛かった理由について、田辺さんの半生記からの引用で「若い私には老いが書けなかったのだ。大王と大后を書くには年数が足らなかったのだ」と、パネルで紹介する。
資料では、最初に同タイトルで掲載した「のおと」の複製と誌面のパネルや、大后磐之姫(いわのひめ)を主人公として書いた「時代小説 風わたる高楼(たかどの)」が掲載された「小説サンデー毎日」(1971年3月)、単行本刊行翌年の1978(昭和53)年と2017(平成29)年に刊行された文庫本などを展示する。
同作品はさまざまな広がりを見せ、資料では、同作を原作とする宝塚大劇場月組公演を実況録音したLPレコードや、宝塚の脚本をもとに描かれた漫画、神戸市を拠点とする劇団「劇団神戸」の公演チラシやパンフレットなどを展示する。会場には、田辺さんの作品や古事記に関する書籍など248冊の関連図書を集めた。
田辺聖子文学館学芸員の住友元美さんは「この展示をきっかけに、こんな世界があるんだと古事記も読んでもらえたら。当時読んだことのある人は、若い世代の出会いと反乱、年老いた夫婦のあつれきを、若い時と違う読み方ができる」と話す。
開館時間は9時~19時(土曜・日曜・祝日は17時まで)。月曜休館。10月10日まで。