石切劔箭(いしきりつるぎや)神社前の「お食事処 すずや×石切丸」(東大阪市東石切町1、TEL 072-982-3119)が4月1日、石切名物「縁起のおでん」を炊く店頭の飾り鍋を40年ぶりに新調した。
「でんぼの神さん」として知られる石切劔箭神社。「でんぼ」は、関西の言葉で「腫れ物」を意味し、同神社には病気平癒を願い多くの人がお百度参りに訪れる。石切参道商店街では、牛すじやタコの足など、「体を切る」ことを想起することが無いよう、切り身を入れないおでんを100年以上、「縁起のおでん」として提供している。
現在、神社参道で「縁起のおでん」を提供している店は7店。地域の店舗では切り身を入れず、濃い味付けの関東炊きのおでんを店頭の大きな丸鍋で炊くという点が共通している。「おでんといえば四角い鍋に仕切りをして味が混ざらないようにしているものが多いが、素材のうまみとだしのうまみが混ざる丸鍋を使っている。ずっと見て手を入れないと辛くなるので手間がかかるが、この味を提供したいので丸鍋をやめずに続けている」と、同店の小西学さん。
現在営業する7店のうち、飲食店として一番古くから営業しているのは同店で、以前は道頓堀の芝居小屋に仕出し屋として出入りしていた。現在の店舗は、飲食店営業のために2つ目の井戸を掘った1910(明治43)年の記録が残っているが、それ以前から営業をしている記録は残っていない。正確な営業開始年は不明だが、「石切の店を始めた時からおでんを出しているのは分かっているので、110年以上はご当地おでんを提供している」という。
参道でのおでんの販売は同店の開業以前からあり、具材はどの店もほぼ同じ。同店は、あげ、ごぼ天、ちくわ、卵、大根、ジャガイモ、こんにゃくの7種で、3種盛り(500円)、5種盛り(800円)、おにぎりやお吸い物をセットにした「縁起のおでん定食」(1,050円)を提供。持ち帰りも可能で、コロナ禍のこの2年は持ち帰りが増えているという。
同店では、約40年使った鍋の底が薄くなってきたことから鍋を新調。取っ手のついた天ぷら鍋を使っている店もあるが、同店ではこれまで同様、飾り鍋を使う。小西さんは「飾り鍋を作っているのは日本で1社だけ。厚みがある鍋なので40年もってくれた。新しい鍋は味が変わるので、店頭で使うまで1カ月ほど味を調整した」と話す。以前、使っていた飾り鍋は店頭に飾っている。
「味や販売スタイルなど、地域の風情を凝縮したご当地おでん。店によって味付けが違うので、それぞれの店の味をめぐってほしい」と話す。
営業時間は10時30分~16時。