東大阪の伸線産業の歴史と市内で作られている製品を紹介する「伸びて繋(つな)がるモノづくり展2023」が8月24日、大阪府立中央図書館(東大阪市荒本北1)1階で始まった。
東大阪市内の事業者が作った製品を市がブランド認定する「東大阪ブランド」と同図書館のコラボ企画。東大阪のものづくりの源流は、鋳物、伸線、木綿それぞれにあるとされ、同展では伸線に焦点を当て、針金や金網、ねじの製造工程や歴史を紹介する。
東大阪ブランド推進機構副理事でオーシン(川田2)社長の藤田剛さんによると、東大阪の伸線業は、江戸時代にかんざしに使う銅の線材を依頼されたことによるという。当初は人力で行われていた伸線業だが、生駒山麓の急流を利用した水車による加工となり、枚岡地区で伸線工業が盛んになった。昭和40(1965)年代には東大阪の伸線業は140社を超え、市最大の地場産業となったという。
会場には、明治・大正期に使われていた水車式伸線機の構造モデルを展示。金属の素材を細長く引き伸ばすには「ダイス」と呼ばれる工具が使われ、開口部が広く、出口が狭い穴が開けられたダイスと合わせて展示する。
線材料から生み出される製品では、針金、金網、くぎ、ねじ、ボルト、ナットなどを展示。農業用や護岸工事用、牛の柵に使われる有刺鉄線など、加工により特徴を出した各社の製品を並べる。六角ボルトは、各製造工程中の製品や動画を交え、どのように製品になっていくのかを紹介する。カラーワイヤーを使ったアート作品や金網の溶接技術を用いたイスの展示なども行う。
8月26日10時から11時には特別企画として、トークセッション「江戸かんざしから令和ボルトまで」を開催。日本の中小企業と産業集積を研究する大阪商業大学経営学科の粂野博行教授を迎え、生駒山の水車で作られた金属の線がものづくりの未来にどうつながるのか、伸線産業に携わる企業の社長たちとともにトークを繰り広げる。
藤田社長は「この土地ならではのものづくりの歴史を見てもらえたら。完成品だけでなく、加工の面白さも知ってほしい」と話す。
開催時間は9時~17時(最終日は15時まで)。月曜休館。入場無料。9月12日まで。