東大阪・高井田地区で10月21日、銅合金鋳造業「藤綱合金」(東大阪市高井田本通1、TEL 06-6782-8892)が開業した。
代表の藤綱伸晴さんは、同じ高井田地区にあった船舶バルブや機械部品などを手掛ける上田合金に2010年に入社。工場長代理として溶解、鋳型(いがた)作り、鋳込み作業から仕上げまで鋳造に関する一連の作業を担当していたが、今年1月に上田富雄社長が急逝し、2月末に同社は廃業。先が見えない中、仕事の依頼や引き抜きの話も来ていたが「上田社長の遺志と技術を継承したい」と、藤綱さんら従業員有志が「上田合金復活プロジェクト」を発足。藤綱さんはプロジェクトに専念して支援者を探し、仕事の依頼は同業者との間を取り持つなどしてつないできた。
目標としていた金額には届かなかったが、支援者からの寄付や金融機関からの借り入れをもとに溶解炉を購入し、「藤綱合金」を高井田で開業。鋳造作業の補助と営業を担当する大西健仁さん、上田合金廃業後、他社の工場で経験を積んだ宗廣直之さんと3人でのスタートとなった。県外からの誘致の話があったが、「上田社長はこの高井田が好きだった。今、銅合金を鋳造しているのは高井田に2軒しかない。地場産業の鋳物の火を消すのは寂しいとの思いからこの地を選んだ」と、上田合金のあった場所から約600メートル離れた地に工場を構えた。
古代の銅鐸(どうたく)や銅鏡を復元し地域の小中学校に寄贈したり、日航機墜落現場に鎮魂の鐘、東日本大震災で被災した神社に銅鏡を奉納したりするなど、技術力をアピールするとともに社会貢献にも力を入れていた故・上田社長。修学旅行生の工場見学受け入れなども積極的に行っていたが今はその体制が整わないため、「出向いていくことで体験してもらうことはできないか」と、八戸ノ里の「宮本順三記念館 豆玩舎ZUNZO」を運営するおまけ文化の会とともに企画し、25日には、商業施設「フレスポ長田」で小学生以下を対象とした体験イベント「溶解メタル」を実施した。
藤綱さんは「鋳物の作り方はいろいろあるので未経験の作り方にも挑戦している。まずは信用を得て足場を固めたい。将来はオリジナルの最終製品を作るとともに、地域貢献もしていきたい」と意欲を見せる。