大阪樟蔭女子大学(東大阪市菱屋西4)で3月22日、中・高生を対象にした「第8回田辺聖子文学館ジュニア文学賞」の表彰式が行われた。
同大学の前身の樟蔭女子専門学校国文科を卒業した作家・田辺聖子さんに関する研究機関、資料館である大阪樟蔭女子大学田辺聖子文学館が主催する文学賞。表現力豊かな若い世代の育成事業の一環として、全国の中学生・高校生を対象に、読書・文化活動の発展向上に寄与しようと2008年に同賞を創設した。
同賞では、小説、エッセー、読書体験記、短歌、俳句、川柳の作品を募集。応募作品数は年々増え、第1回の応募件数8104作品に対し、今回は約4倍となる3万1405作品が集まった。同館館長で審査委員長の中西進さんや田辺聖子さん、作家の林真理子さん、小川洋子さんらが審査員を務め、115作品の入賞作品が決定した。
表彰式に登壇した中西審査委員長は、「ジュニア文学賞では、面白い表現や発想がありこの歳にしてこのような見事なものが書けるのかという観点と、いかにも若者らしさがあふれているもの、2つの観点があるが後者の作品を選んだ。将来の完成に向かっているところが最も尊く、大きな未完成感を1つの基準として選ぶのがいいと感じた」などとあいさつした。
各部門の最優秀賞受賞作品の中から田辺さんに選ばれた最高賞の「田辺聖子賞」は、中学生部門で兵庫県・滝川第二中学校3年生の原田侑奈さん、高校生部門で東京都・白百合学園高等学校2年生の友田英里さんが受賞した。
原田さんの応募作品・読書体験記部門「『羅生門』を読んで」は、「『悪』は『悪を拒む心』との間を行き来するのが人間だという読み取りに納得した」と選考長の中西進さん。「悪」をめぐってよく思考が行き届いていたことが評価された。原田さんは「これまで小説部門で2回応募し、中学生最後の年なので読書体験記で応募しようと思った。このような名誉ある賞をいただけて感無量。将来は言葉に携わる仕事ができれば」と笑顔を見せる。
高校部門小説の選考長の小川さんに「群を抜いた完成度の高さだった」と評された小説「白猫記」を書いた友田さんは、「応募は5回目。こんな立派な賞をいただいて天にも昇る気持ち。高校生活の最後に司馬遼太郎さんや織田作之助さん、田辺聖子さん縁の大阪で受賞できたことをうれしく思う」と晴れやかな表情を見せていた。
読書・文化活動全般で優れた成果を出した学校を表彰する「学校賞」では、文部科学大臣賞に椙山女学園中学校と愛知県立天白高等学校(ともに愛知)、文字・活字文化推進機構賞に滝川第二中学校(兵庫)が選ばれた。