司馬遼太郎記念館(東大阪市下小阪3、TEL 06-6726-3860)で10月29日、企画展「『坂の上の雲』に見る武人の教養-広瀬武夫の『最期の手紙』にちなんで」が始まった。
司馬さんの小説「坂の上の雲」に登場する広瀬武夫は、日露戦争の「旅順口閉塞作戦」に少佐として参加。第2次作戦時に攻撃を受け、沈没する船で部下を探しに行き戦死。その後、「軍神」としてあがめられた。同館では今年6月、広瀬が戦死する20日前に書いた手紙を東京の古書店から入手。その手紙を中心に、「坂の上の雲」に登場する武人たちの手紙や書を展示する。
手紙は、幼なじみで東寺の執事だった松永昇道に宛てたもので、1904(明治37)年3月7日に書かれたもの。第1次旅順口閉塞作戦の報道を知った松永から弘法大師のお守りを贈られたことに対するお礼と返事で、手紙は一度、行方不明になった。同館が入手した手紙は木箱に入っており、手紙部分は長さ145センチ、幅18センチ。封筒とともに表装され、手紙について書かれた文化時報と京都日出新聞の切り抜きが添付されていた。
同切り抜きによると、行方不明になった手紙を京都の医師が大正期に古美術商で発見して入手。本物だと分かり、松永に返却しようとしていたところ、「せっかく購入されたものだから」と、松永は自ら詠んだ和歌とともに保管を託したという。広瀬はこの手紙の後にも親戚や知人に手紙を出しており、広瀬武夫全集に収録されているが、今回入手した手紙は未収録。
同展では、秋山真之が広瀬に宛てた手紙や、東郷平八郎、大鳥圭介、乃木希典らの書軸、「坂の上の雲」第660回「旅順総攻撃」の自筆原稿など、初公開12点を含む40点の資料を展示する。
上村洋行館長は「司馬は、時代の背景や空気感が感じられる手紙に関心があった。武人の教養を筆跡から感じてもらえれば」と話す。
開館時間は10時~17時。月曜休館(祝日の場合は翌日)。入館料は、大人=500円、中高生=300円、小学生=200円。来年4月19日まで。