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東大阪・布施ラインシネマが閉館 87年の歴史に幕、全スタッフで観客見送り

スタッフ全員が壁際に立ち最終上映の観客を見送った

スタッフ全員が壁際に立ち最終上映の観客を見送った

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 東大阪市内唯一のシネコン「布施ラインシネマ」(東大阪市足代新町)が2月29日、閉館した。

最後まで残った観客にあいさつをする稲内支配人

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 同館を運営する岡島興業は、1933(昭和8)年に映画事業を始め、布施に「昭栄座」を開館。戦後、1946(昭和21)年に「朝日劇場」をオープンしたのを皮切りに、7館の映画館を布施で運営した。「リオン座」の名称で営業していた現在の場所に、1997(平成9)年、7つのスクリーンを備えたシネコンの「岡島ラインシネマ」を開場。「布施ラインシネマ 北館」と名称を変え、線路南側の映画館は集約して「布施ラインシネマ 南館」となり、10スクリーンの布施ラインシネマが誕生。北館と南館を統合し、現在の7スクリーン1145席の映画館となった。

 昨年9月に閉館を発表し、「最後に名作をたくさん上映したい」と、最後に見たい映画のリクエストを募集。開業からの87年にちなみ、1月24日から最終営業日まで、87本の名作映画を上映する「布施ラインシネマのラストショー」を開催した。

 最終営業日の2月29日は閉館を惜しむ人が詰め掛け、来館者が書いた「好きな映画のタイトル」で埋め尽くされた壁や、同館が開場した1997年からの全公開作品一覧、同館が所蔵する過去の写真、スタッフそれぞれが選ぶ「映画ベストテン」など、閉館に向けて装飾したロビーの写真を撮る人であふれた。

 最後に上映したのは17時からの「イエスタデイ」。上映前には稲内康行支配人がスクリーン前に登場し、「イエスタデイは記憶にまつわる映画だと思っていて、記憶にとどめる、記憶をよみがえらせる、記憶を伝えていくなど、記憶を背負って前進していくとても幸せになれる作品だと思って最後の上映に選んだ。今回の映画、映画鑑賞の体験、当館のことも含めて皆さまの記憶に刻んでいただければ」と話し、「映画館はたくさんあるのでこれからも支え続けてほしい」と結んだ。上映後は、場内に拍手が鳴り響いた。

 最終上映の終了後は、見学できるよう映写室を開放し、本編上映前の広告のフィルムを切って渡すなどのサービスも行った。ロビーには、当日シフトの入っていなかったスタッフも含め、35人の全スタッフが集まり、来館者は見送るスタッフに「ありがとう」「お疲れさまでした」とねぎらいの言葉を掛けていた。

 大阪市内から来館した34歳の女性は「大阪市内の映画館でラストショーのパンフレットを見て初めてきた。最後に選んだ作品にそういう意味が込められているんだと思った」、東大阪市内在住の55歳の女性は、「ラインシネマがオープンした頃から来ていて、ラインシネマがあるから布施に引っ越し、最近は年間100回ぐらい見に来ていた。今日は仕事で映画の時間には間に合わなかったが、お見送りをするスタッフのお見送りをしに来た」と話し、「音がいいし椅子もいい、スタッフさんがみんな素晴らしい。閉館は身を切られるような思い」と、閉館を惜しんだ。

 稲内支配人は「ラストショーを発表して以降、見たいのが多く毎日通いたいと言ってくれるなどうれしかったしやって良かった。毎日、寂しいね、残念だねと世代を問わず声を掛けてもらい、泣きながら対応していたスタッフもいた。今日一日、ずっとお客さまがロビーにいて、写真をとってくれたりしたことに感謝している。幅広い世代にご支援、ご支持いただきありがとうございました」と、感謝の言葉を重ねた。

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