東大阪市指定文化財「旧河澄家」(東大阪市日下町7、TEL 072-984-1640)が7月12日、「古民家ガイドツアー&原始ハス見学会」を行った。
2018(平成30)年からハスの開花時期に合わせて行っている同イベント。江戸時代に庄屋(=名主)を務めた河澄家と井上家の庄屋屋敷と井上家所有のハス池を見学するツアーで、井上家は住居として使っているため、日ごろは一般公開していない。
旧河澄家は、江戸時代に代々日下(くさか)村の庄屋を務めた河澄家の庄屋屋敷で、2001(平成13)年に東大阪市指定文化財の指定を受け、2011(平成23)年に一般公開を開始。見学会では参加者らがガイドの解説を聞きながら、明治時代に造られたとされるかまどや、上田秋成ら文人が集まった奥座敷の棲鶴楼(せいかくろう)、市天然記念物に指定された樹齢約500年のかやの木、枯池式枯山水の主庭、河澄家所蔵の道具が並ぶ土蔵などを見学した。
旧河澄家の近くにある井上家は、長屋門の前に生駒石を中心に作った大きな灯籠があり、奥には大阪では数例しか残っていない大和棟(高塀造り)の主屋が建つ。この辺りは昔は海岸だったことから、土間には日下貝塚の出土品が展示されており、1926(大正15)年の発掘時の写真なども掲げる。見学会では、居住する井上家昌さんのガイドで、家の構造やかまど、泥棒よけの逆さ札、出土品などを見学し、昔の人の暮らしぶりを感じた。
井上家の裏には2つのハス池があり、一般も見学できる。古事記の中で引田部赤猪子が「日下江の 入江の蓮(はちす) 花蓮 見の盛り人 羨(とも)しきろかも」と詠んだ歌から、5世紀ごろに日下の湿地にハスが咲き誇っていたとされ、原始ハスは、1936(昭和11)年に植物学者の大賀一郎博士が善根寺七軒屋のハスを鑑定し、原始的なハスとして名付けた。その後、枚岡市文化財審議委員の堀勝さんが研究のために自宅に植えたものが1965(昭和40)年に開花。1967(昭和42)年に井上家の水田に株分けされ開花した。井上さんは「手にとって香りをかいでみて」とうながし、参加者は香りをかいだり写真を撮ったりして楽しんでいた。
参加した地元女性の一人は「ハス池があるのは知っていたが初めて見た。昔の人の知恵で建てられた家は感心することが多く、ゆっくりと話が聞けてよかった」と満足げな表情を見せていた。
井上さんは「ここで生活をしているので普段は公開していないが、旧河澄家さんとの地域づくりの取り組みで参加させてもらった。緑と歴史のある地域で文化や歴史を後世に継承していきたいので、機会があればまた公開したい」と話す。