企画展「タンザニア発 ティンガティンガ・アートのいま」が現在、東大阪市民美術センター(東大阪市吉田6、TEL 072-964-1313)で開催されている。
ティンガティンガ・アートは、1960年代後半にタンザニアで誕生したアート。同センター学芸員の田中由紀子さんによると、タンザニアで土産物として売られていた絵のほとんどがコンゴで描かれていたものであったことに疑問を抱いたエドワード・サイディ・ティンガティンガさんが、働いていた工事現場にあった合板にエナメルペンキで絵を描いたのが始まりという。
描いた絵は木の下で売っていたが、北欧系の人々に評価され、1972(昭和47)には博物館で展覧会が開かれたことから話題となった。ティンガティンガさんは40代で交通事故で死去したため、作家として活動したのは数年だったが、面倒を見ていた親戚たちに絵を教えていたことで、その構図や作風などが受け継がれた。現在は、タンザニアの首都・ダルエスサラーム郊外の工房で約100人のアーティストがティンガティンガ・アートを制作をしている。
会場には、野生動物や鳥、人々の暮らしなどを描いた作品約100点を展示。田中さんは「野生動物のイメージがあると思うが、アーティストは野生動物をほとんど見たことがなく、大人から聞いたイメージや写真、先輩アーティストが描いた作品を見て、想像の中でデフォルメして描いている」と解説する。
最も多く描かれているモチーフは鳥で、「同じ鳥を2羽や3羽並べるものや、メインのモチーフの周りを鳥で埋めるのがよく見る構図」と田中さん。村で生活する人々のさまざまな場面を描いた作品は、食事の準備をするなど日常を描いたもののほか、歴史やアフリカが抱える社会問題をテーマにした作品もある。古くから言い伝えられている精霊「シャターニ」が描かれているものも多い。
ティンガティンガ・アートは観光客向けの土産物から始まったため、人気のあるモチーフや構図、色使いなど、売れる作品の要素が受け継がれてきたが、現在では、6色のエナメルペンキを使って描くシンプルな作風という部分はそのままで、描写方法やスタイルなどは広がりを見せている。「パステル調の色に変わっているのが最近の傾向で、最近は黒いキリンも人気」という。
作品のほか、現地の活動の雰囲気を感じてもらおうと、ペンキや道具、背景だけ描いたものやモチーフの輪郭まで描いたものなどを並べたコーナーなどを設ける。
田中さんは「東大阪は大阪府内で2番目に外国人が多く暮らすまち。外国の文化に触れることが理解につながれば」と話す。
開催時間は10時~17時(12月9日は20時まで)。月曜休館。入場無料。12月18日まで。
同センターでは現在、館外をライトアップしている。12月25日まで。