近鉄奈良線若江岩田駅近くの園芸店「緑甲園」(東大阪市若江本町2、TEL 06-6722-4976)が5月6日、リニューアルオープンから1年を迎えた。
創業者の岡忠さんと長女の園田祐三子さんが経営する同店。忠さんは、62年前に観音竹を育て始め、会社勤めをしながら趣味で古典園芸植物を楽しみ、盆栽教室にも通った。「老後は夫婦でお花屋さんをしたい」と現在の店がある場所の土地を買い、仕事を続けながら1970(昭和45)年に園芸店「緑甲園」をオープン。観音竹、富貴蘭、盆栽など伝統園芸を手がけるようになった。専業主婦だった妻の昭子さんが苗物を仕入れて店に立った。
「富貴蘭は日本特産の蘭科植物で、徳川家斉も愛好し、花はいい香りがするので江戸時代の参勤交代では籠に持ち込んで香りを楽しんでいた」と忠さん。「東大阪でブームがあり、周りで育てている人が多く、交換会に行って育て始めた」と振り返る。
10年ほど前、昭子さんがひざを悪くし、認知症の症状も出始めて介護が必要になったことなどから半分閉める形になった店は細々と続けてきたものの、忠さんが90歳になる頃には店を閉める話が出始めた。「父がやってきた店に現代の要素を加え、後世につないでいきたい」と、大手フラワーショップに約30年勤務した祐三子さんは2022年秋ごろから店をリノベーションする準備を進め、介護をしながら忠さんと一緒に経営することになった。
祐三子さんと一緒に経営することになったことについて、忠さんは「好きなようにやっていいと言った」と振り返る。
リノベーションでは「なるべくお金がかからないように」と知人らに協力を求めた。内装デザインについて、祐三子さんは「伝統園芸を手がける父は自分で育てたミニ盆栽や植木などを販売し、現代園芸を手がける私は切り花やドライフラワーを仕入れてアレンジメントの販売やワークショップを開いたりすることから、モダン古典のイメージでデザインを依頼した」と説明する。雰囲気については「店内でゆっくりしてもらえるようにしたかった」といい、店内の資材置き場は取り払い、カフェスペースを設けた。忠さんと昭子さんが経営していた頃は近所の人が集う店になっていたことにちなむ。屋号は引き継ぎ、新しく作った店のロゴには忠さんが育て続けてきた富貴蘭のイラストを入れた。
リニューアルオープン後は新しくなった店を知ってもらうため、駄菓子を販売したり、ワークショップを開いたり、地域のイベントに出店するなどしてきた。92歳になった忠さんは現在も日本富貴蘭会の名誉役員を務めており、育てた富貴蘭を国内の愛好家のほか、韓国から毎月買い付けに来るバイヤーにも販売している。さまざまな品種の富貴蘭を400鉢ほど育てており、「ゆっくりしていたのに店が新しくなって忙しくなった。盆栽は芸術品なので売らずに手元に置いて眺めていたい。でもうれしい。今は毎日植え替えをしていて忙しい」と笑顔を見せる。
1年を振り返り、祐三子さんは「こんなに大々的にイベントなどをするつもりはなかった。今は第4土曜だけにしたが駄菓子を販売しているので子どもが遊びに来るようになり、母のお客さんだった人も戻ってきて、近所の人が集ってくれている。皆に支えてもらいながらいい1年を迎えられた」と話す。今後は「若い人が富貴蘭を身近に感じて飾りたくなるようなおしゃれなフレームを開発するなど、見せ方を考えていきたい。盆栽のネット販売もできたら」と意欲を見せる。
営業時間は9時~17時30分。日曜定休。