
小展示「黒崎義介の童画 -生誕120年-」が現在、大阪府立中央図書館 国際児童文学館(東大阪市荒本北1、TEL 06-6745-0170)で開催されている。
1905(明治38)年、長崎県平戸市の醤油醸造業家の6男として生まれた黒崎さんは、中学を4年生で中退し、1926(大正15)年に東京の川端画学校日本画部に入学。1927(昭和2)には中央美術展に出品し、初入選した。1931(昭和6)年に童画家として「オハナシノクニ」「児童文学」の編さんに参加し、1934(昭和9)年に新ニッポン童画会に参加。1936(昭和11)年以降、「コドモノクニ」「チャイルドブック」「キンダーブック」などへの作品の提供、絵本や童話集の挿絵や表紙のほか、昔話や翻訳ものなど多数の作品の絵を手がけた。
同館主任専門員の山岡直子さんは「大正から昭和は子ども向けの絵雑誌が充実しており、芸術家の作品が多い。中でも黒崎さんは身近な子どもの姿を写しとっていて、穏やかで明るく優しい顔を描いている。以前から黒崎さんの特集をしたいと考えており、生誕120年を機に初めて企画した」と話す。「黒崎さんは多作で、すてきな絵がたくさんあって選ぶのが大変だったが、片っ端から見て心引かれた作品を選んだ」という47点を展示する。
同展では、テーマごとに5つのケースで作品を展示。昔話を紹介するケースでは、「黒崎さんが好んで何度も描いている」(山岡さん)という「ももたろう」や「はなさかじいさん」「つるの恩返し」など、夏と冬の子どもの情景を描いた作品を紹介するケースでは、ラジオ体操や水鉄砲で遊ぶ子ども、正月の様子など、大正・昭和時代の子どもたちの生活が感じられる絵を描いた月刊の絵雑誌などを展示する。
小学生向けの童話集や海外の作品を紹介するコーナーでは、黒崎さんが装丁や挿絵を手がけた作品を展示。「ドリトル先生アフリカ行」「おやゆびトム」「イソップ絵話」「ピーター・パン」などが並ぶ。戦争に関する作品では、海軍慰問の報告として出版された「軍艦旗の行くところ」や、派遣された中国・海南島方面の子どもたちを描いた作品を展示。「こびととあおむし」は、学徒出陣により出兵し戦死した肥塚彰さんの未稿作品を原作としたもので、山岡さんは「思い入れのある作品らしく、出版のたびに蝶の羽などを何度も描きなおしている」と解説する。
カウンター前には期間中、手にとって読むことができる「キンダーブック」を設置する。
開館時間は9時~17時。月曜休館。9月3日まで。