大阪商業大学商業史博物館(東大阪市御厨栄町4、TEL 06-6785-6139)で6月12日、春季企画展「おまけとカッターナイフ -大阪発のビジネスアイデア展-」が始まった。
ビジネス・アイディアコンテストを毎年開く同大で、「学生に大阪発のビジネスアイデアを見てもらいたい」と、宮本順三記念館「豆玩舎ZUNZO(おまけやズンゾ)」(下小阪5)と同館が企画した同展。食玩の始まりといわれる「グリコのおもちゃ」を手掛けたデザイナーの宮本順三さんと、世界100カ国以上で使われている刃物手道具ブランド「オルファ」(大阪市)の創業兄弟の一人・岡田三朗さんの歩みとともに製品や資料を展示し、アイデアの源泉に迫る。
宮本さんは1915(大正4)年、呉服店の息子として生まれ、大阪市内でセルロイド加工業を営む親せきの養子として育つ。幼いころから絵と工作が好きで郷土玩具を集めており、中学では美術部に入部。将来は絵描きを目指していた。美術学校を受験するも父親に反対され、大学に進んだ後は美術部を創設。卒業論文で「宣伝媒体としての景品政策論」をまとめ、グリコ入社試験では、当時は他社から仕入れていたおまけを自分で考案したいと訴え、1935(昭和10)年、オリジナルおもちゃを考案する「広告課おまけ係」として入社した。
戦時中は材料不足から天津工場での製造に携わり、中国で終戦を迎える。翌年日本に引き上げ、養父と家業のセルロイド販売を再開しグリコを退社。プラスチックの玩具・小物を製造する会社を設立し、おまけ業者としてグリコのおもちゃを考案。半世紀以上もの間、グリコのおもちゃに携わった。
現・オルファ相談役の岡田三朗さんは、大阪市内で紙の断裁業を営んでいた岡田家の次男として生まれ、兄の良男さんは旧制中学を中退し、電気工をはじめ、さまざまな職業を経験。三朗さんは印刷会社に勤務し、酒のラベルなどのデザインを手掛けた。当時、紙を切るにはカミソリを使っており、柄がなく両端しか使えないことに不満を持った三郎さんは良男さんに相談。板チョコをヒントにカミソリの刃に折り線をつけ、角が丸くなったら折る「折る刃式カッターナイフ」のアイデアが浮かんだ。文具メーカーに製造を依頼したが相手にしてもらえず、事業化を目指して1959(昭和34)年に岡田商会を設立。1968(昭和43)年には輸出を始め、110カ国で愛用される製品に育った。
会場では2人の歩みをパネルで紹介し、宮本さんが手掛けた昭和10年代のおもちゃの原画や、昭和20年代後半~40年代のおもちゃなどを展示。宮本さんと三朗さんの出会いや、子どもたちに作ることの大切さを伝えるため、2人が手掛けたアイデアおもちゃなども紹介する。
6月17日には、宮本さんの長女として東大阪で生まれた樋口須賀子さんと岡田三朗さんが登壇するシンポジウム「おまけとカッターナイフに学ぶ 大阪発のビジネスアイデア」を開催。開催時間は10時~12時。受講無料。会場は、大阪商業大学ユニバーシティ・コモンズre-Act3階セミナールーム。
企画展の開催時間は10時~16時30分。入場無料。日曜休館。6月24日まで。