近鉄奈良線・八戸ノ里駅から司馬遼太郎記念館(東大阪市下小阪3、TEL 06-6726-3860)までの道路沿いに設置したプランターの菜の花773本が2月1日、何者かに切り取られた。
司馬遼太郎さんが野に咲く菜の花が好きだったこと、作品に「菜の花の沖」があることなどから、2月12日の司馬さんの命日を「菜の花忌」と命名。同館周辺では、自治会や病院、商店街などから成る「春一番に菜の花忌の会」が育てた菜の花のプランターや鉢を毎年命日前後に設置している。
今年は自治会や学校、商店街など42団体が参加。昨年8月にスタートし、9月と10月には会合を開いて種まきや成育状況の報告、育て方のレクチャーなどを行い、それぞれが命日に咲くように菜の花を育ててきた。例年は1月下旬にはほぼ咲いているが、今年の冬は寒さが続いて開花が遅く、まだ蕾(つぼみ)のものも多かったが例年と同時期の1月28日、河内小阪駅・八戸ノ里駅から同館への道筋を示すように約1620個のプランターを並べた。
被害は2月1日の10時ごろ、同館園芸担当のボランティアスタッフが見回りに行った際に発見した。被害にあったのは八戸ノ里駅から同館までの約650メートルに設置したプランターで、339個のプランターに植えられた773本が切り取られた。花の咲いたものには手を付けず、花芽のついたものだけ茎から切り取られており、園芸担当スタッフは「花を折ったり周りに散らばったりはしていないので、いたずらではなく食用に取ったのではないか」と推測する。同館が配布している種は早咲きの品種で観賞用。
被害が発覚した後には、被害団体と今後の対策を検討。被害届を出した方がいいという意見もあったが、多くの人は「取らないでほしい」と書いた看板をつけて見守る方がいいという意見だった。「寒さでまだ育っていないものがいつ咲くんだろう、咲いてほしいという希望を摘み取られた。育てた人の心を踏みにじらないでください、もう二度としないでくださいという、当館と育てた人の思いでポスターを作った」といい、2月8日に設置した。
被害の状況は各メディアで報じられ、同館には励ましのメールやファクス、手紙などが遠方からも届いたという。「毎年菜の花の切り花を贈ってくれる指宿市の皆さんからも、元気を出してくださいという言葉とともに菜の花を追加で送ると言っていただいた。見舞いのメッセージがたくさん届き勇気付けられた」と、上村洋行館長。「菜の花にはタフさがあるので、3月になったらまた花芽が出ることを望んでいる」と話す。
同館前を散歩していた男性は、毎日通っているのですぐに気付いたといい、「観賞用か食べたんか知らんけど、花と育てた人の気持ちが分からんやつはあかん」と憤りを見せる。