企画展「日本のテセレーションデザイン その歩みと展望」が9月25日、大阪商業大学 ユニバーシティ・コモンズ リアクト(東大阪市御厨栄町1)南館1階ギャラリーで始まった。
久保道夫さんとコラボしたニットウェアと、谷岡学長が制作したゴジラとキングキドラをモチーフにした作品
オランダの版画家M.C.エッシャーの生誕100年となる1998(平成10)年に設立した日本テセレーションデザイン協会が企画した同展。同協会メンバーはエッシャーの影響を受けた数学者やデザイナー、教育者ら。同展は、エッシャーがアルハンブラ宮殿の装飾から大きな影響を受けた1922(大正11)年から100年となることを記念して企画した。
テセレーションは同じ図形を使ってピッタリと敷き詰めることで、「レンガや床のタイル、服のプリント柄など、テセレーションは身の回りにたくさんある」と同協会代表の荒木義明さん。同展では、世界中で広く作品が知られる久保道夫さんの作品をはじめ、日本でテセレーションデザインの一線で活躍する作家7人の作品を展示し、日本でどのように広まってきたかを紹介する。
奈良県在住で元博報堂のアートディレクター、雑誌「広告」の元編集長の久保さんは、日本のテセレーションデザインのレジェンド的存在で、大阪OMMビルの電照広告の写真やアパレルブランドとコラボしたニットウェアなどを展示。平面から立体まで手がける中村誠さんは、生物モチーフの球体作品などを展示する。
荒木代表は、ハンガリー大使館からの依頼でルービックキューブ誕生40年を記念して作った立方体の作品を紹介。「平面に敷き詰めたものをどのようにしたら立体で柄がつながるかをテーマに作った」と話す。グラフィックデザイナーの鳥越眞生也さんは、AからZまで26種のアルファベットで始まる動物などをモチーフにしたテセレーションデザインをまとめたデザインブックを展示する。
天童智也さんのブースは、同じ形のパーツを組み合わせ、形が変わったり、裏表が変わったりするカレイドサイクルによる立体の動かせる作品が並ぶ。凸五角形の敷き詰めを解く数学的研究から創作も行っている杉本晃久さんは、伊藤若冲の「虎図」をモチーフにしたデザインを展示。グラフィックデザイナーの藤田伸さんは、装飾パターンや数学アートなどに関する本の出版やパズルのデザインなどを手がける。
同大学の谷岡一郎学長は、「大阪万博オランダ館でエッシャーの作品を見てファンになった」といい、同キャンパスの床の敷き詰め模様は谷岡学長がデザインした。表裏で柄の異なる正三角形のピースを敷き詰めて模様を描く「T3パズル」を考案したのも谷岡学長で、テセレーションデザインの普及のため、T3パズルを用いた児童向けのワークショップやデザインコンテストを開いている。「算数は答えがあるが、T3パズルはやればやるほど答えが見つかって、自分で作っていく楽しさがある。発想の転換ができ、幾何学の奥深さを知るのにいい」と荒木さん。
テセレーションデザインの魅力について「ワクワクする気持ちを育んでくれ、やればやるほど楽しさが無尽蔵に出てくる。電源もお金も要らないのに、自分の発想力を使ってこんな楽しいことができると知ってほしい」と話す。
開催時間は10時~17時(最終日は15時30分まで)。入場無料。10月2日まで。