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東大阪・田辺聖子文学館で企画展 田辺さんの日記や作品で大阪大空襲振り返る

初公開の「大阪空襲」直筆原稿

初公開の「大阪空襲」直筆原稿

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 昭和100年・終戦80年企画展「田辺聖子が書いた1945年6月/1945年8月」が現在、大阪樟蔭女子大学田辺聖子文学館(東大阪市菱屋西4)で開催されている。

初公開の「天窓に雀のあしあと わが六月一日」製本直筆原稿

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 作家の田辺聖子さんは1928(昭和3)年生まれ。1944(昭和19)年4月から1947(昭和22)年3月まで大阪樟蔭女子大学前身の樟蔭女子専門学校に在学し、大阪大空襲、終戦、戦後の価値観の転換など、激動の3年間を過ごした。

 田辺聖子文学館は2007(平成19)年6月に開館。18周年を迎えた今年が昭和100年・終戦80年に当たることから、開館記念日の6月10日に合わせて同展を企画した。6月と8月の2期に分けて田辺さんの作品を紹介する。第1弾の6月の展示では、田辺さんの日記や作品から初公開2点を含む6月1日の大阪大空襲に関連する資料25点を展示する

 「田辺聖子 十八歳の日の記録」(文芸春秋)は、在学時の1945(昭和20)年4月1日から1947(昭和22)年3月10日までの日記で、田辺さんの没後に発見され、2021年12月に単行本として刊行された。同展では、6月1日に学校で授業を受けていた時に空襲警報が出て、不安を抱えながら田辺さんが住んでいた大阪市福島区まで帰った時の様子を読むことができる。同館学芸員の住友元美さんは「空襲の日の描写は5ページにわたり書かれている。空襲だけでなく、樟蔭に関することも書かれている貴重な資料」と話す。

 製本直筆原稿「天窓に雀のあしあと わが六月一日」」と直筆原稿「大阪空襲」は、初公開の資料。「大阪空襲」は、20世紀最後の年に組まれた文芸春秋「私たちが生きた20世紀 全篇書下ろし362人の物語」の中で、「私の戦争体験」をテーマに書かれたエッセー。いずれも掲載誌とともに展示する。

 6月1日の空襲で焼失した田辺さんの生家「田辺写真館」に関する資料を展示するコーナーでは、大阪文学学校時代に「家」をテーマに書いた自伝的作品「歴史」(未刊行)の直筆原稿を展示。住友さんは「田辺さんにとって家には大きな意味があり、執着が強い。愛着を語った上で空襲時のことをシンプルに書いている」と解説する。ともに展示する作品「花狩」では、「空襲の経験を基に、明治末の北の大火から逃げ惑う人を描いている」という。

 田辺さんの自伝的作品は「私の大阪八景」「欲しがりません勝つまでは」などを紹介。「当時の若い女の子が戦争に対してどのような印象を持っていたかなどが書かれているので、戦争をテーマにした作品の資料として田辺さんの自伝作品が生かされている」と住友さん。「空襲のあった6月1日に全てを壊されたが日記を書き続け、作家になってからも伝えていかなければいけないと重ねて書いている。終戦80年を機に読んで知ってもらえたら」と話す。

 6月30日まで。8月1日からは企画展第2弾として、終戦直後を振り返る展示を行う。

 同文学館の開館時間は9時~16時30分。日曜・祝日休館。入館無料。

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