東大阪市民美術センター(東大阪市吉田6、TEL 072-964-1313)で現在、企画展「大阪府20世紀美術コレクション 岩宮武二の写真展」が開かれている。
1920(大正9)年、鳥取県米子市に生まれた岩宮さんは、写真館を経営する叔父の影響で小学生の頃から写真に興味を持つ。鳥取県立米子商蚕学校商業科を卒業した後は南海ホークスに入団し、2軍捕手となるが体を壊し退団。丹平写真倶楽部に入会し、その後、発表した作品は次々と受賞した。
1940(昭和15)年、徴兵により写真を撮ることができなくなった岩宮さんは、安井仲治さんの教示により俳句の勉強を始め、写真の根源となる部分を俳句により培う。復員してからは大阪に移り写真で生計を立てるようになり、1954(昭和29)年の「フジフォトコンテスト」の受賞で名が知られるようになった。
大阪府20世紀美術コレクションには700点を越える岩宮さんの作品があり、同展では、「佐渡」「日本海」「日本の美 京いろとかたち」「works from 30years」「今に生きる」シリーズなどから35点を展示。「佐渡」シリーズの写真は主観的なものを持たずドキュメンタリー写真として撮られたもので、学芸員の亀井見奈さんは「岩宮さんは隠岐の島を臨むところで育ち、日本海の離島に心引かれるものを持っていて、ただのドキュメンタリーではなく、その奥に思いを感じる作品」「短い中に抽出する俳句のように写真の中にいくつもの思いが感じられる」と解説する。
「日本の美」は、五重塔醍醐寺や祇園祭の山鉾の縄がらみなど伝統の美を切り取った作品で、「切り取り方でこんな風に見せられるんだと感動する」と亀井さん。「今見ても新鮮で、一枚一枚迫力があり、作品を知っている人にも改めてじっくり味わってもらいたい」と話す。
12月20日・28日、来年1月3日の14時からはギャラリートークを行う。
開館時間は10時~17時。月曜、12月29日・31日、1月2日休館。入場無料。1月7日まで。