企画展「宮本順三展~祭りと踊りに見る世界のデザインと色彩~」が現在、東大阪市民美術センター(東大阪市吉田6、TEL 072-964-1313)で開催されている。
キャラメル菓子「グリコ」のおもちゃデザイナーとして、約3000種類のおもちゃをデザインした故・宮本順三さんは、1915(大正4)年、大阪市に生まれ、10歳から東大阪で過ごした。学生時代から郷土玩具の収集や、それらを描くことが好きで、グリコ(現江崎グリコ)入社面接時には「子どもの喜ぶおもちゃを作りたい」と志望し、1935(昭和10)年の入社時には広告課景品考案係に配属となった。戦時下で中国天津工場に赴任し、終戦後は退職して家業のセルロイド工場を再建。グリコの協力業者として、おもちゃの製造に携わった。
宮本さんは、おもちゃのデザインのために世界の玩具収集やプラスチックの研究を重ね、研究旅行中には現地の人々や風景をスケッチや写真、映像に残し、帰国後、それらを基に油絵を制作。50代後半からは世界の祭りや踊りを現地で取材したスケッチを基に、多くの作品を残している。
同展では、宮本さんが描いた祭りや踊りの作品やスケッチなど、75点を展示。会場は、大阪の祭りと伝統をテーマにした展示に始まり、青森ねぶた祭りや花笠祭りなど日本のさまざまな祭りを題材にした絵画作品に続く。宮本さんは、1937(昭和12)年にグリコの引き換え賞品として「世界一周スタンプ集」を編集しており、子どもたちが世界に関心を持つよう、日本の年中行事や郷土玩具、世界の文化や歴史を掲載。スタンプ集や基となったスケッチを展示する。
世界の祭りと踊りの作品を集めたエリアでは、国立民族学博物館収蔵の作品13点などを展示。うち、中国やモロッコ、インドネシアなどの祭りや踊りを描いた6点は150号の大型作品で、同センター学芸員の田中由紀子さんは「保存状態がとても良く、描かれた当時の色がそのまま残っている。70歳を過ぎてから好奇心旺盛な自分の目で見ないと捉え切れないと世界各地で取材をし、現地の人々のエネルギーから元気をもらい、そこから学びや気付きがあるということを、作品から特に若い皆さんに感じてほしい」と話す。同展では、宮本さんが自身を描き込んだ作品が5点展示されており、「探しながら見ると楽しんでもらえるのでは」と田中さん。
宮本さんの孫で「宮本順三記念館 豆玩舎ZUNZO(おまけやズンゾ)」(下小阪5)学芸員の磯田宇乃さんは、「宮本は『子どもは世界の宝である。世界のどの国の民族の文化も素晴らしい。子どものおもちゃや世界の伝統的な民族文化を大切にする国というのは平和で豊かである』と来館者に伝えていた。ニュースを見れば世界中で紛争や地域の問題が流れてきて心が痛むことが多いと思うが、宮本が愛した世界の人々や人類の幸せ、子どもたちへの願いをこの展覧会で伝えることができれば」と願う。
開催時間は10時~17時。入場無料。12月17日まで。