東大阪・若江岩田の「杏(あん) ドライフラワーと暮らしのアトリエ」(東大阪市若江北町2)が3月23日、盲導犬候補の子犬を家庭で育てる「パピーウォーカー」ボランティアを始めた。
生花店勤務などを経て、花を使った創作を手がける店主の田中敦子さん。生花やドライフラワーを使って花束やアレンジメント、額装などの作品を自宅1階のアトリエで受注製作するほか、夏休みには児童を対象に花を使う工作教室を開いている。
2021年5月にアトリエを開いて間もない頃について、支援学級に通う長男が症状が悪化し、学校に通うことができなくなったと振り返る田中さん。以前、飼っていた2匹の犬も死んでしまい、「毎日家で辛そうにしている子どものモチベーションになるものを模索していた」と話す。その後、親友の夫が両目を失明する事故に遭うという出来事もあった。
「子どもの送り迎えを引き受けるぐらいでしか助けられなかった。家族や友人に何かできることはないかと考えていた時にパピーウォーカーの制度を知り、犬を飼うのではなく長男にトレーニングをさせたい、友人の子どもにも盲導犬を見せてあげたい、店をしているので地域の人に盲導犬を知ってもらいたいなど、自分の考えていることと盲導犬育成ボランティアが一致した」と話す。
パピーウォーカーは、盲導犬候補の子犬が訓練所に入るまでの生後2カ月から1歳まで10カ月間、家庭で預かり、人との関係づくりや家庭でのルールを教えるボランティア。パピーウォーカーになるには、室内飼育できることや、月に1回、千早赤阪村にある訓練所で行われるレクチャーに参加できること、車に乗れること、長時間留守にしないことなどの条件があるが、田中さん夫婦と中学1年になった長男に中学3年の長女、小学6年の次男を交えた5人で家族会議を開き、「家族で協力しあってみんなで世話をしよう」と決め、半年ほど前に日本ライトハウス(大阪市)に登録し、3月23日、ラブラドルレトリバーの子犬を迎えることになった。日本ライトハウスでは随時、パピーウォーカーを募集している。
現在は自宅とアトリエで育てており、「家の中で排せつする時間を作って外でしないようにコントロールしたり、車では足元でステイさせたりするトレーニングをしている」と田中さん。「恐怖心を植え付けてしまうと人との信頼関係が成り立たないので、しかることはせず、できた時にほめるしつけ方をしている。おやつはやらず、ごほうびの言葉となでることでコミュニケーションが取れている」と話す。
子どもたちは「前に飼っていた犬はもう大きかったので、赤ちゃんの犬は初めて」「トレーニングするのが楽しい」と話すなど、家族で楽しんで育てている様子。預かる際にいろいろな場所に連れて行ってほしいと言われており、「今後は犬と一緒に行けるところを探し、キャンプや買い物などにも一緒に行きたい」と話す。
田中さんは「自分から世話をしようとしてくれるなど子どもの経験になるし、訓練所で働く人や飼育する人の仕事を見せることができたり、盲導犬の仕組みを知ることができたりする。支援学級の自立学習の時間や、小中学校の登校の見守り時に連れて行って、盲導犬を知ってもらいたい。地域に盲導犬が入れる店が少ないので、地元にも入店に協力してくれる店が増えたら」と話す。