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東大阪の企業が段ボール製リビング学習机発売 被災地支援から誕生

マツダ紙工業の松田和人社長

マツダ紙工業の松田和人社長

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 段ボールケースや美粧ケースなどの製造販売を手掛けるマツダ紙工業(東大阪市衣摺5)が2月21日、段ボール製リビング学習机セット「かしこいくん」を発売した。

段ボール製リビング学習机セット かしこいくん

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 1958(昭和33)年創業の同社。10年ほど前から受注量の多い製品は価格の安い中国の企業にシェアを奪われるようになり、「生き残ることはできるが長年付き合いのある企業から価格だけですぐ業者を替えられるのは情けない。柱を別に作らなければ」と考えた松田和人社長は段ボールで消費者向けのワインセラーを製造。しかし、どこに売ればいいか分からず作ったままになっていたという。

 2011年に東日本大震災が発生し、阪神淡路大震災発生時に避難所になっていた西宮の中学校にプライバシーを守るための間仕切り用の段ボールを届けたことを思い出し、すぐに製造に取り掛かり1週間後、自立式の新しい間仕切り用段ボールが完成。運送会社に搬送を依頼したが断られ、自らハンドルを握り1100枚の間仕切り用段ボールを福島に届けた。

 何度も足を運んだ松田社長は震災発生から1カ月後、支給されたおにぎり以外のものをスーパーに買いに行き人目を気にしてこっそり食べる親子や、授乳や着替えをトイレでしている女性などの姿を見て「この数では足りない」と、間仕切り用段ボールと合わせ、パイプ椅子が入るサイズの段ボール製授乳室・更衣室を作り届けた。「危機管理室などは男性が多く、女性の困っていることが分からない。現地の女性にとても喜ばれた」と話す。

 被災地支援を続けていた同社だが社員へのボーナスは寸志程度しか渡せず、「思いはあるが社員のためになるのか」と悩んだ松田社長。社員に話を聞くと「作っても段ボールは捨てられ、物として残らない寂しさがあった。こんなにも喜んでもらえるなら」と、社員も被災地支援に賛成したという。

 その後、長引く避難所生活で使えるチェストを作り、「販売してほしい」との声が上がったことから夏ごろには強度を上げた更衣室やチェストなどを商品化。白いチェストは子どもが絵を描いて使うことを想定して作ったが、軽くて移動しやすく、粗大ごみとしてではなく捨てられると、購入者の6~7割を60代が占めていた。

 2011年の12月には幼稚園で机が足りていないと幼児用のデスクセットを作って届け、2012年8月に幼児用デスクセット「おべんきょうごっこ」を発売。「小学校に入学する際に学習机を買ってもらえるので、それまでだけ使うものとして作ったが、大阪市内の主婦にヒアリングをするとマンションでスペースがないなど、学習机を購入していないと答えた人が5割もいた」といい、購入してもリビングで勉強をする家庭も多く、リビングで使用する小学生用のデスクセットを開発した。

 学習机セット「かしこいくん」は、天面をフィルム加工して水や汚れに強くし、強化段ボールの使用と設計により机・椅子ともに100キロの荷重に耐えるようにした。消しゴムのかすをまとめて捨てられるダストボックスも設置。対象年齢は7~12歳。机のサイズは幅67センチ、奥行き43センチ、高さ53センチ。重さは、机4キロ、椅子0.9キロ。価格は9,720円。同社のオンラインショップのほか、4月5日まではあべのハルカス2階イベントスペースでも販売する。

 「世の中に役立つものを作ったら売れる。被災地で段ボールの良さに気付かせてもらった」と松田社長。「面白いものをどんどん作り、日本一面白い段ボール企業になりたい」と目を輝かせる。

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