
「宮本順三記念館・豆玩舎ZUNZO(おまけやズンゾ)」(東大阪市下小阪5、TEL 06-6725-2545)で7月10日、「文化の駅講座『大阪画談~絵描きと絵の具のはなし』」が開かれた。
グリコのおもちゃデザイナーで画家の宮本順三さんが手がけたおもちゃや海外で収集した民俗文化資料、絵画作品などを展示する博物館として、1998(平成10)年に大阪市内で開館した同館。2002(平成14)年に現在の場所に移転し、2018(平成30)年には同館に隣接するスペースに市内外の多世代が集う文化施設・社会教育の場を目指す「文化の駅」をオープン。企画展示を開くギャラリーや、市内企業のおもちゃや工作キットを販売するミュージアムショップ、工作教室や絵画教室、講座を開くスペースを設ける。
宮本さんの生誕110年記念として開いた「大阪画談」をテーマにする講座の第1部には、老舗画材メーカー「ホルベイン画材」、プロ用絵の具製造「ホルベイン工業」(東大阪市菱屋西1)顧問の吉村信夫さんが登壇。吉村さんによると、ホルベイン各社の歴史は吉村さんの祖父・吉村峯吉さんが1900(明治33)年に文具の卸、小売りを営む「吉村峯吉商店」を大阪市で設立したのが始まり。クリップやノートの製造、舶来絵の具の販売を主とし、同店が開発した「大学ノート」の商標を文具メーカーに移譲し、その資金を基に画材に力を入れ始めたという。1913(大正2)年には、現・ホルベイン画材、ホルベイン工業の本社がある中河内郡小阪村でキャンバスやスケッチ箱など洋画材料の製造を始めた。
第1部では、同社の創業からの歴史や、大阪の近代洋画界の発展に寄与した1924(大正13)年開設の洋画学校「信濃橋洋画研究所」と同社の関係などを紹介。第2部では、宮本順三記念館学芸員の磯田武士さん、宮本さんの孫で事務局の磯田宇乃さん、宮本さんの長女で同館館長の樋口須賀子さんが登壇。信濃橋洋画研究所が中之島に移転し、改称した「中之島洋画研究所」で宮本さんが学んだ日の絵日記や、ホルベイン初代社長の清原定謙さんと宮本さんの歩みを紹介。併設するギャラリーでは、宮本さんの日記やスケッチ、油彩画、中之島洋画研究所の講師の作品などを展示した。
講座の最後に磯田宇乃さんは「東大阪で絵の具が作られ、有名な絵描きさんたちが大事に使っている。東大阪の絵の具の文化や大阪の美術の底力というものがあると思える会だった。東大阪・大阪の文化や芸術を、信濃橋洋画研究所や中之島洋画研究所を創設された先生方の思いを引き継ぐ形で、この館から皆さんと盛り上げていけたら」と締めくくった。