大阪商業大学商業史博物館(東大阪市御厨栄町4、TEL 06-6785-6139)で6月4日、春季企画展「石に刻まれた文化財 山頭火・若江城・アンコール・ワット」が始まった。
中河内府民センター東大阪分室主催の拓本教室に参加したメンバーを元に、1986(昭和61)年に結成した「中河内拓本クラブ」。大阪商業大学谷岡記念館内に拠点を置く「河内の郷土文化サークルセンター」に加盟し、現在まで約30年活動を続ける。結成当初は「拓本がはやっていた」といい、大阪や奈良にも多数の拓本クラブがあったが、現在は「大阪でも2団体しかないのでは」と話す。
同クラブも会員が減り、現在は9人で活動。1年に1回ほどは遠方、それ以外は日帰りで行ける場所で採拓するほか、月に4回は表装の技術を磨く。同クラブの田中絹子さんは「近隣のグループの作品展を見に行って情報交換をし、欲しいと思ったものは採りに行く。仲間でするのが楽しい」と話し、峰本順吉さんは「ハイキングもできて歴史も知ることができる。わからないものは古文書の先生に読んでもらい、知ることが楽しい」と、魅力を語る。毎年、東大阪市民美術センターで新作を展示しており、今年も10月に作品展を予定。作品展を見て入会を希望する人もいるが「80歳以上が中心メンバー。年寄りばっかりなので辞めていく」と笑う。
拓本は古代中国で発明された複写法の一種で、風雨で磨り減った石碑や石像は、写し取ることにより肉眼で見るより鮮明な姿を浮かび上がらせることができる。「採拓するものは句碑や歌碑だけでなく、記念碑など凹凸のあるものであればなんでも採る」と峰本さん。同展では、さぬき市などで一昨年に採拓した俳人・種田山頭火の句碑を中心に出品しており、「山頭火は松尾芭蕉に次ぐ碑の多さ」と解説する。
東大阪市内のものでは、昨年の春に採った若江城跡の顕彰碑や記念碑など13点を展示。同大学図書館に所蔵する「河内名所図絵巻之四」と合わせて展示するほか、田中さんが1995年に採拓したアンコール・ワット遺跡の廻廊外壁に浮き彫りされる双体の女神像の拓本も並ぶ。
同館学芸員の池田治司さんは「拓本だけでなく、表具や表装のバリエーションも楽しんでいただけたら」と話す。
開館時間は10時~16時30分。入場無料。6月23日まで。