染色・クリーニングなど繊維加工を手掛ける福井プレス(東大阪市西石切町6)が現在、廃棄物を再利用した染色に取り組んでいる。
1938(昭和13)年、クリーニング工場として創業した同社。3代目の福井伸社長が実家のクリーニング工場に戻った2003(平成15)年には、アパレルメーカーのサンプル品など小ロットの染色加工を始めた。2010(平成22)年には、個人向けの衣類染め直しサービス「染め直し屋」の運営を開始。工場の近くに店舗も構えた。
同社では2019年から、賞味期限の切れたコーヒー豆やドリップ後のコーヒーのかすを染料として再利用する「珈琲(コーヒー)染め」を開始。最初は染色だけしていたが、現在は、染色後のかすを培土としたキノコ栽培の研究を近畿大学農学部と進めており、キノコ栽培キットを製作し、家庭で栽培した後の菌床を家庭菜園の肥料に再利用して土にかえすプロジェクトに取り組んでいる。
最近では企業からの依頼で、クラフトビールの醸造所から出る麦芽やポン酢を作る際に捨てるだいだいの外皮などでTシャツやエコバッグを染めるなど、さまざまな素材を使った染色に挑戦。昨年からはSDGsに取り組む阪急百貨店と、百貨店で出る廃棄物を集めて染めるプロジェクトが始まった。
同プロジェクトでは、食品売り場から出るアボカドの皮で染める「アボカド染め」に取り組み、5月には、母の日が終わって余ったカーネーションで衣類をピンク色に染めた。染めた商品は百貨店のイベントで販売する予定という。
「アパレルでは草木染など天然素材を使った染色がはやっているが、廃棄物で染めることに意義がある。これで染められるのではという物を見つけた時はワクワクする」と福井社長。同社では、コーヒー染めを施した生地に蜜蝋(みつろう)をコーティングした布ラップ「蜜蝋ラップ」なども作っており、「いろいろな廃棄物で蜜蝋ラップを作るワークショップなどもしていきたい」と意欲を見せる。