東大阪市立高井田中学校69期生(現・3年生)が昨年11月から制作に取り組んできたタウン誌「高井田ウォーカー」が7月4日、完成した。
69期生は、中学入学直後に新型コロナウイルス感染症拡大の影響で休校になり、1年時の宿泊学習は延期、運動会や文化祭は中止になり、先輩の卒業式への参列もかなわなかった。2年時は、運動会などは規模を縮小して行われたが職場体験が中止になるなど、行事が制限された。
昨年2年生の担当していた山本泰央教諭らは「コロナ禍で制限の多かった69期生に仲間と協力して行う新しい活動を通じて特別な思い出を持たせたい」と、コロナ禍でできる活動内容を検討。「校区内の情報を集めたり取材をしたりしたいが、壁新聞やパワーポイントでの発表では新しい活動や特別な思い出にならない。残るものと考えた結果、製本をして生徒たちに配ることで一生の思い出になるのではと考えた」という。
同活動には、地域に対する愛着を深め、仲間と一緒に取り組むからこそ成功することがあるという経験をさせるという目的のほか、教員らの「高井田中学校での3年間をコロナによる『喪失』と捉えてほしくない」という思いがあったという。
同活動は2年生全3クラスで実施。各クラスで4人グループを作り、地域の商店を紹介する第1章、生徒らが企画し街の魅力を紹介する第2章でそれぞれ2ページずつを担当し、112ページの冊子を作る。11月には地域情報サイト「週刊ひがしおおさか」の前田寛文編集長が「雑誌の作り方」をテーマに授業を行った。
地域の商店を紹介するページでは、生徒が店を選び、アポを取るところからスタート。「何軒もアポを断られ、心が折れそうになっている子もいた」というが、第1章では地域の飲食店や物販店、美容院や温浴施設など27店を紹介する。第2章では、地域にあるポストや自動販売機、公園、飲食店に関する調査やコインパーキングの料金の比較、バリアフリーやゴミについての調査などをそれぞれ行った。誌面の編集は全生徒に配布したiPadを活用し、教員らはほとんど修正をしなかった。
同中学校から1000歩以内にある施設を調査した「TAKASEN」を担当した男子生徒は、「高井田の街にある施設を知りたくて、チームのみんなと数えながら歩いた。1000歩以内にこんなに多くの施設があるんだって思った。お店の取材は難しかったが、お店の人が良くしてくれた。みんなで高井田の資料が作れて楽しかったし、チームの絆が深まった」と笑顔を見せる。
ゴミ箱や送水口、照明など「高井田で人の顔に見えるもの調査」を企画した女子生徒は、「3つの点が人の顔に見えるよねって突然思い付き、調べてその現象がシュミラクラ現象と呼ばれることを知った。なかなか見つからず雨の中がんばって探した」と振り返る。
山本教諭は「第1章を作った時より第2章が上手になっている。大人相手にアポをとるなど難しく、社会性が育ってきたと思う。完成して配布する時に『早く見せて』と見たがっていて、立派な形になり子どもたちも達成感を味わえたと思う」と話す。