大阪樟蔭女子大学・田辺聖子文学館(東大阪市菱屋西4、TEL 06-6723-8182)で10月22日、特別企画展「『女流』文学の系譜-継承者としての田辺聖子」が始まった。
「明治百年『炎の女性像』与謝野晶子 火の牡丹」スクラップブックと「千すじの黒髪―わが愛の与謝野晶子」
記録や記憶の継承を大切にする田辺聖子さんが女流文学者から何を受け継ぎ、何を伝えようとしたのかをテーマとした同展。近代以降の作品に焦点を当て、田辺さんが憧れた、与謝野晶子、杉田久女、吉屋信子ら女性文学者について書いた評伝作品を集め、田辺さんについて次代の女性作家が書いた作品と併せて展示する。
与謝野晶子関連では、田辺さんの「与謝野晶子」直筆原稿や、1968(昭和43)年に2カ月半にわたって新聞連載され、自身がスクラップブックにまとめて書き込みをした「明治百年『炎の女性像』与謝野晶子 火の牡丹」、同作に大幅な加筆をした「千すじの黒髪―わが愛の与謝野晶子」(文藝春秋、1972年)などを展示。
田辺さんが女性で初めて直木賞の選考委員に就任した、1987(昭和62)年に出版した「花衣ぬぐやまつわる……わが愛の杉田久女」は、20年以上文学賞から遠ざかっていた田辺さんが女流文学賞を受賞した作品で、田辺さんの思い入れが強い作品。学芸員の住友元美さんは「人物像だけを書いた本は多いが、田辺さんはこんなにセンスのある人が悪女と言われることに疑問を持ち、作品に触れ作家として取り上げた。この時代に女性が才能を生かすことと夫との関係性を取り上げ、夫婦の在り方についてどうあるべきかのモデルとして捉えた作品」と解説する。関西では杉田久女が取り上げられる企画展は少なく、久女の弟子の遺族が寄贈したという色紙やうちわなど貴重な資料も並ぶ。
田辺さんが防空壕に持ち込んで読み、作家を目指すきっかけの一つとなった吉屋信子に関する資料を集めたコーナーでは、1993年~1998年に「月刊Asahi」「アサヒグラフ」に連載され、1999年に単行本で刊行された「ゆめはるか吉屋信子 秋灯机の上の幾山河」の初出誌や単行本、田辺さんが「私の大阪八景」(1965年)を献本した際に吉屋信子から送られてきた礼状などを展示。
「どの作品も、『女流』というバイアスを取り払い、社会批判を組み込みながら女流文学の地位を高めているのが共通点。ほかの評伝作家と違う、田辺さんの目線で書かれている作品」と住友さん。
11月19日~来年1月28日には、同大学公開講座「読み解き田辺文学」を全4回で開講。11月9日には小阪商店街の「まちゼミ」の講座、同11日には関連イベントとして学芸員が解説するギャラリートークを行う。
開館時間は9時~17時(土曜は16時まで)。日曜・祝日休館(11月23日は開館)。入場無料。11月23日まで