大阪樟蔭女子大学(東大阪市菱屋西4)で8月25日、人形浄瑠璃文楽の人形遣いで国際英語学科非常勤講師の吉田和生さんの授業が行われた。
吉田さんは1967(昭和42)年、人形遣いの吉田文雀さん(人間国宝、昨年死去)に入門。職人を目指し、文楽人形の首(かしら)を作っていた大江巳之助さんを訪ねたところ吉田文雀さんを紹介され、そのまま入門。翌年に人形遣いとして初舞台を踏んだ。立役(たちやく、男性の役)から女方まで幅広い人物を演じ、師匠の品格高い芸を継承している。入門50年目の節目となる今年、国の文化審議会が重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定するよう文部科学大臣に答申した。
同大学では2010年から国際英語学科で「日本文化実習」を担当。この科目では、国際人としてまず自国の文化を再発見するために、江戸時代より400年続く「文楽」をとりあげ、文楽の歴史・人形の仕組み、舞台の構造についての理解、文楽の学習を通じた「上方文化」「日本の伝統文化」のエッセンスの理解、人形の初歩的な遣い方ができることを目標とし、国立文楽劇場での文楽鑑賞を含め15コマの集中講義を行っている。
吉田さんは「文楽は男性が演じるもので人形が重く、女子学生が演じるには体力的な問題があり、どういう内容にするか苦労した」と言い、実技では子どもが登場する作品「傾城阿波の鳴門」の一部を学生が発表。親を探す巡礼姿の女の子をそれぞれが演じ、全員の発表が終わると「文楽に限らず、歌舞伎や相撲など日本のいろんな文化を自分の言葉で紹介できるようにしてください」と締めくくった。
講義を受けた3年生の堤優子さんは「海外留学をしたときに日本のことを聞かれ、説明できなくて悔しい思いをした。今回の授業で日本の文化を知ることができ、海外に行っても日本のことを話せると思った」と言い、「どうやって動かしたら人間らしいのかを考えて、楽しくできた」と満足そうな表情を見せた。
講義を終えた吉田さんは「日本の古典が現在にどう至っているかを知らない人に説明できるようにしたい。この授業がその起点になってくれれば」と願う。人間国宝認定については「師匠の一周忌も終わっていない時点で連絡をいただき、いいのかなと思った。人間国宝になったからといって上手くなるわけではないので、今までの積み重ねを精進して、さらにもう一つ積み重ねていきたい」と話した。